第三十五回 看板建築と聖地巡礼

看板建築という言葉を知っていますか。

関東大震災後に多く建てられ、建築家の藤森照信が命名した、店舗兼住宅の一形式のことです。
その多くは木造2-3階建の建物で、正面だけを銅板やモルタル、タイル、スレートなどの耐火素材で覆い、装飾した町屋のことを言います。建築物でありながら、店舗の表面自体が屋外広告と化していることから、看板建築というのですね。

この建築様式、佐原にも残っています。
しかも、たびたび様々な場所で登場している、マニアの間ではちょっとした話題のスポットであるのです。

最近の一番有名な登場シーンといえば、映画「君の名は。」ではないですかね。
本編冒頭、主人公の通学シーンに中川精肉店として出てきます。
ドラマや映画のロケ地を訪れる、”聖地巡礼”の場所としてよく知られています。
またこちらの建物は、出版物「看板建築図鑑」の表紙も飾っています。

正面から見ると、モルタル仕上げの立派な建物に見えますが、横から見ると後ろ側は木造という、とても興味深い作りです。
かつての伝統的な町屋に代わる、洋風の外観を持った店舗併用の都市型住居は、大正モダンと言われたように、当時はとてもハイカラだったのだと思います。
そしてそのデザイン性は、令和になっても色褪せずに今も健在で残っています。

これ以外にも、香取市はたくさんのロケ地として使われています。
町歩きをしながら、あっ、ここは、何て探してみてくださいね。

えになるかとり かとりっぷ
第三十五回 看板建築と聖地巡礼
文・写真 きのしたまみ
提供元 (株) NIPPONIA SAWARA